小学六年生の初恋話【YouTube漫画】

こんにちは、松宮望です。

「小学生の初恋」をテーマにシナリオを書きました。

俺はアキト。小学6年生のガキンチョだ。

親の転勤で都会から、星ノ森(ほしのもり)というド田舎へと引っ越してきた。

渡り鳥のように、色々な場所へ渡ってきたけれど、今までで1番小さい町。

今までで1番大きい町だった。

恋をしたからだ。

隣の席に座るナツミは、元気の塊のような女の子。

ナツミはおっちょこちょいで、授業中も消しゴムをよく落としていた。

その度に、俺が拾ってあげていた。

手渡ししてあげると、「ありがとう」と太陽みたいな笑顔で言ってくるのだ。

ナツミに笑顔を向けられる度に、俺の鼓動はドキドキした。

恋の音だと自分でもハッキリとわかった。

俺とナツミはずっと隣の席だった。

1年間で席替えは3回あった。

くじ引きだったけれど、俺の隣には必ずナツミがいた。

1回目のくじ引きでは、「ええ〜またアキトなの〜」と残念そうな声。

2回目のくじ引きでは、「うっそ!またアキトなの」と驚きの声。

3回目のくじ引きでは、「あはは、やっぱりだ!よろしくねアキト」と嬉しそうな声。

自意識過剰かもしれないけれど、ナツミも俺と同じように恋をしているのだと思った。

同じであって欲しいと願った。

ナツミとはなぜかずっと一緒にいられると思っていた。

終わりはアッサリと訪れた。

渡り鳥が旅立つ日が近づいてきたのだ。

親の転勤が決まった。

「あ〜良かった。田舎って虫が多くて嫌だったの。買い物に行くとジジババたちが話しかけてくるのもウザかったし。アキトも良かったでしょ?」

母さんが嬉しそうに言った。

「うん、そうだね」

「ここに残りたい•••」という言葉を俺は必死に飲み込んだ。

本音を言ったところで、親を困らせるだけだと思った。

俺は親の力を借りなければ生きていけない小学6年生。無力すぎるガキンチョだった。

父さんは目を細めながら優しく俺の頭を撫でた。

「ごめんな、アキト。お前はここが好きだったんだな。いつも我慢させてゴメンな。無力な父さんを許してくれ」

涙がこぼれて、俺は父さんに抱きついた。来年から中学生になるくせに、わんわん泣いた。

早く大人になりたかった。

我慢しなくても、素直に自分の気持ちをさらけ出せる、そんな大人になりたかった。

卒業式が行われた。

涙を流している同級生はいなかった。

当然だ。みんな同じ中学校に行くのだから。

欠けるのは俺1人だけ。

卒業式が終わった後、教室で俺のお別れ会が行われた。

俺のもとには同級生が集まっている。

「向こうでも元気で頑張ってね!」

「絶対連絡するからな!」

「可愛い女子紹介してくれよ!」

「うん、ありがとう•••みんなも元気で」

俺は笑みを浮かべ続けた。

同級生の言葉は嘘だと分かっていた。

いや嘘をついている自覚はきっとない。

これまでの同級生たちと同じように、俺のことなど忘れるだけなのだ。

俺はチラリと教室の隅にいるナツミに目を向けた。

元気の塊だったナツミは、ずっとうつむいたままだった。

お別れ会が終わり、家に向かって歩いていると、ナツミの大きな声がした。

「アキト!待ってよアキト!」

後ろを振り向くと、ナツミが走ってきた

俺の前で立ち止まると、ナツミは乱した息を整えて、大きく息を吸った。

そして、

「私アキトのことが好き!大好き!私と付き合って!」

顔を真っ赤にしながら、涙目になりながら、叫ぶように言った。

ナツミの気持ちが嬉しかった。

嬉しくて悲しくて、俺はナツミと目を合わせることができなかった。

「無理だよ。俺、転校するし•••」

「遠距離でも良いよ!私、毎日アキトに電話する。向こうの学校での話とか新しくできた友達の話とかいっぱい話してよ。私もいっぱい話すから」

「ごめん•••」

「どうして?本当は私のこと嫌いだった?いつも隣の席だったこと本当は嫌だったの?本当は離れたいと思っていたの?」

「違う!」

俺は叫んだ。

「分かれよ!分かってくれよ。頼むからそのままサヨナラしてくれよ•••」

決心が鈍ってしまう。顔が熱かった。俺の顔はきっと涙でぐちゃぐちゃだ。

俺には分かっているんだ。今気持ちを受け入れたとしても、ナツミの気持ちはやがて離れてしまう。

今までの同級生たちと同じように。

俺たちの小さな恋は、「同じ場所」にあったから成就していただけなのだ。

「わかった。諦める」

ナツミはつぶやいた。

そして言った。

「その代わり、1つ約束して」

「約束?」

「高校を卒業した時、アキトが誰とも付き合っていなかったら私に会いにきて。今度はアキトから私に告白して」

「えっ」

「約束だから!絶対に約束だからね!」

呆気に取られる俺を残して、ナツミは走り去ってしまった。

引越し前にナツミと会った最後の日だった。

高校の卒業式が終わると、俺はナツミとの約束を果たすため、星ノ森に向かった。

約束が成就されるとは思っていない。ナツミと会えるとも思っていない。人の心は移り変わるものだから。

俺は今年の春から親元から離れて1人暮らしを始める。

渡り鳥の旅は終わったのだ。

電車から降り、駅を出ると、「あっ」と声が聞こえた。

ナツミだった。当時の面影を残したまま、成長したナツミが立っていた。

我慢する必要はもうなかった。

俺は小学6年生のガキンチョを卒業したのだ。

好きな女の子に好きだと素直に伝えられるぐらいには大人になったのだ。

「俺はナツミのことが好きだ!大好きだ!俺と付き合ってくれ!」

「はい、喜んで!」

拾った消しゴムを手渡す度に見せてくれた太陽みたいな笑顔で、ナツミはそう言ってくれた。