イラストレーターとひどいお客さんの話【YouTube漫画】

こんにちは、松宮望です。

イラストレーターとイラストを依頼してくるお客さんのシナリオを書きました。

私はハルカ。イラストレーターの仕事をしている。

最近悩んでいるのは、ひどいお客さんの存在だ。

『ハルカさんのイラストめっちゃ好みです。ぜひイラストを描いてください!』

『ありがとうございます。もちろんOKです。イラスト料金は3万円になります』

『はぁあああ!イラスト描くのに金取るのかよ!ふざけんなよ」

イラスト料金を提示すると、お客さんがブチ切れるのだ。

『無料で描くというのは・・・。私は生活のためにイラストを描いていますので』

『たかがイラストで金取るって詐欺じゃん。お前詐欺して生活しているの。最低だな。いいから描いてよ』

『ですから、私も生活のためにイラストを描いていますので、無料で描くことはできません』

『もういいよ。お前みたいな下手くその絵なんていらないよ。才能ないんだからイラスト描くのやめろよ。目障りだから』

「はぁ・・・」

ここ最近、無料でイラストを描いて欲しいという、ひどいお客さんが増えた。

もちろん、お客さんの全員が、無料で描いてと言ってくるわけではない。

私のイラストに価値を感じて、有料でも関係なく依頼をしてくれる客さんもいる。

私の絵を好きだと言ってくれるのは嬉しいけれど、無料で描くわけにはいかない。

イラストを描くことには時間がかかる。

彼らはイラストを数分で簡単に描けると思っているフシがあるけれど、実は全く違う。

イラストを描くのには、技術を必要とするし、時間がかかるのだ。

特に私は遅筆だ。1枚のイラストを完成させるのに、数日かかることもある。

「イラストを描くのは好きだし楽しいけれど、お客さんとの関係性って難しいな」

 

「ナツミのイラストの人気、最近すごいね。フォロワー数も10万越えたんでしょ」

少し意地悪な言い方だったかもしれない。

彼女はナツミ。学生の頃からの親友だ。

引っ込み思案で友達のいなかった私は、教室でひとり絵を描いていることが多かった。

そんな私の絵に興味を持って、声をかけてきたのがナツミだった。

「私も絵を描いてみたい!」と言ってきたのだ。

先に絵を描き始めたのは私なのに、ナツミのほうが売れっ子なのは、やはり嫉妬してしまう。

それでも、ナツミは私の数少ない親友だから、嫌いにはなれなかった。

「私の場合は運が良かっただけだよ。イラスト描いているラノベがアニメで人気になったから、私の認識度が増えたってだけ。いつまでも人気が続くとは思っていないよ」

「・・・そうね」

イラストの仕事は永遠じゃない。

今は人気でも、一年後、二年後も、お客さんに今のイラストを受け入れてもらえるとは限らない。

イラストだけで食べていくのは大変なのだ。

「ハルカのほうはどうなの?何か変化はあった?」

「実は・・・」

私は無料でイラストを描いてくれと言ってくる、ひどいお客さんのことを話した。

「ああ、いるよね。そういうお客さん。私にも毎日のように来るよ。こっちは仕事で描いているんだから、タダで描くわけないのにね」

「昨日もほら!断ったら、めちゃくちゃ文句言われてビックリしたよ」

ナツミのスマホには、お客さんとのやり取りが表示されていた。

「あれ?ナツミとやり取りしている、闇の住人さんって私にも連絡してきたよ」

「うっそ!!

私はスマホを操作して、TwitterのDMを開いた。

名前も間違いなく闇の住人さんだ。

「ほら、これ」

「どれどれ」

スマホを見せると、ナツミは目を細めた。

「下手くそ・・・。才能がない・・・」

私はぎょっとした。

普段から笑顔を絶やさないナツミが、見たこともない形相(ぎょうそう)をしていた。

次の瞬間、ナツミが叫んだ。

「ふざけるんじゃないわよ!ハルカの絵が下手?才能がない?冗談じゃないわよ。私に絵を教えてくれたのは、ハルカよ。私の先生をよくも侮辱してくれたわね!」

「完全に怒った!こいつ徹底的につぶす」

怒り爆発だった。

ナツミはスマホを高速で操作し始めた。

私はあっけに取られっぱなしだった。

「よし完了!これでもう、こいつは完全に終わりね」

「な、なにをやったの?」

一仕事終えた女の顔をしているナツミに、私はおそるおそる尋ねた。

「ふふ~ん、これをツイートしたの」

『闇の住人さんに、私の絵が下手だと言われました。才能がないとも言われました。イラストを描くのを辞めろと言われました。私のイラストって価値がないのでしょうか?』

ナツミのTwitterフォロワーは10万人だ。

ツイートは瞬く間に拡散していった。

ナツミのスマホには、ナツミを慰める声と、闇の住人さんを攻撃する声で溢れていった。

ナツミの10万人のファンたちが、闇の住人さんを決して許しはしないだろう。

闇の住人さんは、反論していたけれど、全くの無意味だった。

ファンたちが信じるのは、ナツミの声だった。

「私のイラストを侮辱するのはいい。だけど、ナツミのイラストを侮辱することは許さない。私の憧れの人を否定することは絶対に許さない」

ナツミの言葉が嬉しかった。

気づいたら、私は涙をこぼして、ナツミに抱きついていた。